どうも。スズキタケヒロです。
脊柱を全て描き終えたので今回は仙腸関節についてまとめていきます。
この領域は腰椎や股関節とも密接に関わる部分なのでこちらも要チェックです。


解剖学

仙腸関節は仙骨と腸骨の間で形成される関節です。
腸骨の間に仙骨が挟まれるような形で、体幹と下肢の接合部となり脊柱⇄下肢の力の伝達の役割を担っています。
これと似た上肢の関節は胸鎖関節になります。(体幹と上肢の接合部)
似ていても機能はまるで正反対、胸鎖関節は可動性、仙腸関節は安定性にステータスを全振りしています。
仙腸関節の損傷は骨盤と腰部が繰り返し、または片側性、一方向性のねじれを受けることで生じる可能性がありこれには性差は関係ないそうです。
また、姿勢や腰椎の前後弯変形や側弯症、腸骨のマルアライメントや脚長差などの構造異常によるメカニカルストレスからの負傷の可能性もあります。
ちなみに脚長差が1cmあると体幹運動の際に仙腸関節に加わる圧縮負荷は5倍に増加するそうです。
ちなみに仙腸関節が症状の主因かどうかを確認するための最善法は仙腸関節に直接麻酔を注射して症状が軽減するかどうかをチェックすることです。
関節の構造
仙腸関節は触診しやすい上前腸骨棘のすぐ前にあります。
仙骨の耳状面と腸骨の耳状面で形成される関節面は非常に強固で、関節面はブーメランのような形をしています。


子供では仙腸関節には比較的可動性があり、思春期〜成人期にかけて徐々にその可動性を失っていきます。
それに伴い関節面も平滑な状態から荒くなっていきます。
その方が摩擦が増えて関節としては安定しますよね。
80歳頃になると1割の人は完全に骨化または癒合し、この割合は圧倒的に男性で高くなっています。
靭帯
仙腸関節を安定させる靭帯は以下のとおりです。
・前仙腸靭帯
・腸腰靭帯
・骨間靭帯
・長・短後仙腸靭帯
・仙結節靭帯
・仙棘靭帯(下4)
前仙腸靭帯

イラストの2番の靭帯です。
関節包の前と下の肥厚部分で仙腸関節前面を補強します。
腸腰靭帯

イラストの10番の靭帯です。
仙腸靭帯とともに仙腸関節前面を補強します。
骨間靭帯

このイラストだと番号が振られていませんが部位で言えば2と3の間あたりになります。
関節接合部の後縁と上縁にある靭帯で仙骨と腸骨を強固に結合させています。
長・短後仙腸靭帯

イラストの6番の靭帯です。
幅広で薄い短後仙腸靭帯は仙骨の後側方に沿って走行し、腸骨結節と上後腸骨棘に付着します。
発達してる長後仙腸靭帯は第3、4仙椎から起こり上後腸骨棘に付着します。
仙結節靭帯

イラストの5番の靭帯です。
上後腸骨棘、仙骨外側から起こり坐骨結節に付着します。
遠位の付着部で大腿二頭筋の腱と癒着しています。
仙棘靭帯

イラストの4番の靭帯です。
仙骨や尾骨の尾側から起こり坐骨棘に付着します。
運動学
仙腸関節ではわずかな関節運動が起こります。
これは成人で回転運動1〜4°、並進運動1〜2mmとされています。
仙腸関節の動きには独特の言い方が存在します。
前屈(締まり、Nutation)
腸骨に対する仙骨の前方回旋、仙骨に対する腸骨の後方回旋またはこれらの同時発生
後屈(緩み、Counternutation)
腸骨に対する仙骨の後方への回旋、仙骨に対する腸骨の前方回旋またはこれらの同時発生
仙腸関節における動きはわずかですが骨盤全体の負荷(歩行や走行など)軽減にはとても重要な要素になります。
その仙腸関節の動きが増加するのが労働や分娩です。
関節弛緩は妊娠最終3ヶ月で起こり、第1子の妊娠と第2子の妊娠では後者で顕著になり、出産時の前屈の増加で仙骨が後方に回旋し、骨盤出口を広げ出産を補助します。
男性に比べて女性の仙腸関節の関節面が平滑で、これは関節運動の抵抗減に役立っています。
ちなみに仙腸関節のクローズパック肢位は前屈位です。
筋による安定
仙腸関節を安定させる筋は以下のとおりです。
・脊柱起立筋と多裂筋
・横隔膜と骨盤底筋群
・腹筋群
・股関節伸筋群
・広背筋
・腸腰筋と梨状筋
これらの筋により
関節面に圧縮力が発生し、前屈力が増しロックされ、関節周囲の結合組織を緊張させます。
多裂筋と脊柱起立筋は仙骨を前方回旋させ、腹直筋と外腹斜筋と大腿二頭筋が腸骨を後方回転させます。
また大腿二頭筋は仙結節靭帯と癒着しているので緊張を伝播させます。
広背筋、大殿筋、脊柱起立筋、内腹斜筋、腹横筋は胸腰筋膜を介して仙腸関節を安定させます。

横隔膜と骨盤底筋群の共同活動は腰仙部と仙腸関節の結合をより強固にします。
腹横筋のような水平走行の筋は腸骨を仙骨に向かって押しつけ仙腸関節に圧縮力を加えます。
ちなみに腸骨筋は仙腸関節の関節包に直接付着していて関節包の緊張を高めてくれます。
仙腸関節は臨床的にも重要な部位になってきますので解剖学、運動学の内容はぜひ頭に入れておきたいところです。
今回のブログがあなたの臨床の一助になれば幸いです。
関係性の深い股関節のブログはこちら。


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